多様な雇用形態が当たり前となった現代において、派遣という働き方を選択する人が増えています。幅広い世代の方が派遣社員として活躍していますが、そもそも派遣は何歳まで働けるのでしょか。この記事では、派遣の年齢制限や年齢別の採用傾向などについて解説します。
派遣は何歳まで働ける?
派遣に年齢制限はない
派遣労働者に年齢制限はなく、60歳以上で働いている方も存在します。派遣会社への登録も、年齢制限はもちろん、性別や学歴、職歴、資格、スキル、経験などの条件も設けられていません。即戦力として資格やスキル、経験が求められるイメージがあるものの、未経験者を歓迎している会社も数多くあります。
同様に、仕事紹介にも年齢制限は設けられていません。平成19年10月より募集・採用における年齢制限禁止が厚生労働省によって定められているからです。たとえば、「年齢不問。ただし、35歳未満の方歓迎」などの表現も、35歳未満の方と35歳以上の方で条件が変わり、実質的に年齢制限が行われていることになるので法律上認められません。
派遣は男女ともに40代が中心に活躍
派遣労働者を年齢で見ると、40~44歳が16.7%と最も高い割合を占めています。男女比は男性が15.2%、女性が18.9%です。40代が派遣を選ぶ理由は「自分の都合の良い時間に働きたいから」「家計の補助・学費等を得たいから」「家事・育児・介護と両立したいから」などです。これらの理由から、派遣労働者として活躍している40代はワークライフバランスを重視していることがわかります。
派遣で働くメリットとデメリット
派遣で働くメリットは、職種や仕事内容、勤務期間、勤務地など、自分のキャリアプランやライフプランに合った働き方ができることです。一方、雇用の不安定さはデメリットになります。常に希望や条件に合う仕事があるとは限らず、仕事が見つからない場合は長期的に収入がなくなる可能性もあるからです。
派遣の仕事に向いている人
派遣の仕事に向いている人は、希望の職種や仕事内容、勤務地、勤務時間・曜日を比較的自由に選べるという特長を活かせる人です。たとえば、自分のやりたい仕事に専念したい、専門スキルを高めたい、期間を定めて働きたい、家庭や趣味、勉強などのプライベートと両立したい、などの場合は派遣の働き方はぴったりでしょう。また、会社都合での異動や転勤、職種変更を避けたい人にも向いています。
技術職ならではの時給の高さから正社員より高い年収を得たい、子育てを優先したい、ダブルワークをしたい、という目的がある人も適しているでしょう。働ける期間が最長三年に限られている、派遣されるたびに新しい環境に慣れなければならない、雇用が不安定というデメリットを考慮してもメリットの方が多く感じられるのであれば、派遣の仕事に向いているといえます。
年齢別の採用傾向と対策
20代の場合
未経験歓迎の職種が多く、入社や採用の確率が高い傾向があります。就活をしながら派遣として働いてどのような仕事が向いているかを見極めたり、スキルアップのための勉強をしたりすることができます。能力次第で直接雇用も期待できるのが嬉しいポイントでしょう。
一方、労働期間に制限があるので、十分な教育を受けられない場合やスキルアップに繋がらないことも少なくありません。また、派遣労働者として長期間働き続けると正社員になるタイミングを逃してしまう恐れもあります。補助的な仕事が多かったことによるスキル不足や正社員として就職するのに厳しい年齢になってしまった、などの状態に陥る場合があるからです。
長期的な視点で働き方の選択肢を増やすためには、早めに自分に向いている仕事を見つける、資格を取得しておく、今後どのような雇用形態で働きたいか明確にする、などの対策が挙げられます。
30代の場合
30代も入社や採用の可能性が高く、子育てで忙しい方も少ない勤務時間で柔軟に働きやすい傾向があります。また、パートよりも時給が高いので、少ない勤務時間でも満足のいく収入を期待できるのも特長です。20代の場合と同様に自分にどのような仕事が合っているかの見極めやスキルアップのための勉強もできるでしょう。
一方、希望や条件の合う仕事がなく、次の仕事先を見つけられないという雇用の不安定さもあります。派遣労働者は勤務時間が明確に決まっていることから多くの場合残業を避けられますが、派遣先によっては残業をしなければならず、その場合はワークライフバランスが実現しづらくなることも念頭に置かなければなりません。
40代までに正社員を目指す場合は、タイミングを逃さないためにも紹介予定派遣の利用や早めの就活を推奨します。40代以降も派遣として働きたい場合は得意分野に磨きをかけてコアスキルを身につけておくことが重要です。
40代の場合
資格や経験、コアスキルがあれば即戦力として期待できるので、入社・採用の確率が高い傾向にあります。子育てがひと段落ついた際に教育費の補助として収入を得ることができ、学校関係の急な予定が入ってしまった場合も比較的融通を効かせて働けるでしょう。パートよりも時給が高いのも嬉しい特長です。
ただし、ブランクがある場合は仕事が大きな負担になってしまうことや、扶養家族がいる場合は収入面で不安に感じてしまうこともあるかもしれません。また、派遣に年齢制限がないとはいえ、職種によっては20代や30代を優先的に採用する会社も存在します。
対策として、希望や条件の幅をなるべく広くする、資格取得や経験を積んでおく、などが挙げられます。20代から30代の間に準備しておくことが望ましいですが、スキルや経験がなくても諦めずに、まずは派遣会社にキャリア相談をしてみましょう。
50代の場合
50代の場合は就業場所や仕事内容が限られてしまう傾向がありますが、経験値が高ければ即戦力として採用してもらえます。また、軽作業や簡単な流れ作業であれば未経験でも問題ありません。実務として活かせる資格やスキル、経験があれば、それらを活かして幅広い職種の選択を期待できるでしょう。
高年齢層であることから、経験があっても派遣社員として受け入れてくれるところが少ない場合や、閑散期に派遣切りにあう可能性もあります。対策として、40代のときと同様に希望や条件の幅を広くすると良いでしょう。50代の派遣に強い派遣会社に登録することも効果的です。
派遣ではスキルや経験が重要
年齢とともに求められる能力も上がる
自身の年齢が上がるとともに、派遣先で自分より年下の上司の下で働くことも少なくありません。そのような環境下では、円滑に仕事を進めるためにもより即戦力として活躍することを求められます。厚生労働省による雇用管理改善の阻害要因において「派遣先会社の社員が、派遣労働の仕組みや派遣労働者の適正な活用に関して、十分な知識やノウハウを持っていないこと」に続いて「派遣労働者のスキルより年齢を重視(=若手のほうが望ましい)する派遣先会社があること」が挙げられています。このように、派遣先が派遣という働き方に十分な理解をしておらず、年齢に関して偏見があるのが現状です。
すべての派遣先が派遣に関する知識が不足しているとは限りませんが、いずれの派遣先でも派遣労働者は人手不足を補うアシスタントの役割を果たすので、即戦力が重要になります。仕事に年齢制限を設けるのは禁止されているとはいえ、いまだに年齢に関する偏見が残っていることも留意しておかなければなりません。このような現状を踏まえて、早いうちから資格取得やコアスキルを身につけるなどの対策をしておきましょう。
派遣の仕事で必要なスキルや経験
派遣だけでなく、必要なスキルや経験は職種によって異なります。特に短期間で新しい派遣先に配属される派遣労働者は「コミュニケーションスキル」が必要です。具体的には、自分から挨拶する、時間を守れる、報告・連絡・相談できる、チームと協力して仕事ができる、などが挙げられます。基本的なビジネスマナーはもちろん、派遣先にすぐに馴染めることも重要です。
仕事別に必要なスキルは、コールセンターであればタイピングスキル、事務職であればWordやExcel、PowerPointなどです。外資系や貿易関係の仕事では「TOEIC」や「TOEFL」の一定以上のスコアが求められるでしょう。ちなみに、「経験者」とは実務経験が1年以上の人を指し、応募の際には自分が経験した仕事内容を具体的に伝える必要があります。希望職種が明確に定まっているのであれば、今の能力でその仕事に就けるか、就けないとすればどのような努力が必要か派遣会社のキャリアコンサルタントに相談しましょう。
スキル次第で広がる多様な職種
スキルアップをすることによって、時給アップや職種の幅を広げることが期待できます。とはいえ、高度なスキルや特殊なスキルを取得する場合、費用負担が大きいのがデメリットです。しかし、派遣会社の中には派遣先とのニーズに応じた研修受講の支援を実施している会社も存在します。たとえば、研修受講料の払い戻しに相応する手当や入学金免除、受講料割引などです。
実際に、ある派遣先から3次元CADが使える人を派遣してほしいという要望を受けて研修受講の支援を実施したことがきっかけとなり、手当の適用範囲の拡大に繋がったケースもあります。費用面からスキルアップに向けた資格取得を躊躇している方は、研修受講の支援が手厚い派遣会社を選ぶと良いでしょう。現在、厚生労働省によって派遣社員の能力開発やキャリア形成が見直されているので、適用できる支援やサービスがあれば積極的に活用することを推奨します。
まとめ
ここまで、派遣に年齢制限がないことや40代を中心に活躍していること、採用傾向、必要なスキルについてご紹介しました。年齢制限はないものの、年齢とともに求められる能力は上がるので、早いうちからスキルを身につけ経験を積んでおくことが重要です。派遣ならではの柔軟な働き方を最大限に活かせれば、充実した毎日を送ることができるでしょう。